研究概要

山口喜久二式自然養蜂に基づくローヤルゼリーの品質・機能に関する研究

1) ローヤルゼリーの免疫機能回復効果に関する実験的研究

マウスに強い拘束ストレスを加え、その後に生じる免疫変調にJRJローヤルゼリーがどのような影響を及ぼすかを検討した。拘束ストレスに曝したマウスでは、著しい免疫系の変化が確認され、胸腺の委縮、末梢血リンパ球の減少、顆粒性白血球の異常な増加を特徴としていた。この拘束マウスにローヤルゼリーを投与した結果、これらの免疫異常はバランス良く改善された。
このことから、ローヤルゼリーにはストレス下での免疫機能を正常に回復、維持する効果があることを確認した。
そこで免疫変調の代表例である自己免疫病の予防・抑制に及ぼすJRJローヤルゼリーの効果についても、先天的にSLE(全身性エリテマトーデス)類似の疾患を発症するモデルマウス(NZBxNZW F1)を用いて研究を行い、ローヤルゼリーには自己免疫応答の発現を抑制し、それが原因で起きる腎炎の発症を抑えることによってマウスの延命効果を発揮すると結論した。
また、ローヤルゼリーにはSLEの発症を予防する効果に加えて発症後の病気の進行を抑える効果があることも明らかにした。
本研究は、琉球大学との共同研究であり、得られた結果は、3編の欧文論文として内外の雑誌に発表した。

The efficacy of royal jelly in the restoration of stress-induced disturbance of lymphocytes and granulocytes. Biomed. Res., 19(2): 69-77 (2008) Honey bee royal jelly inhibits autoimmunity in SLE-prone NZBxNZW F1 mice. Lupus, 18: 44-52 (2009) Preventive effect of royal jelly on autoimmune disease in SLE-prone mice: A comparative study. Pharmacometrics, 83(5/6): 59-66 (2012)

2) ローヤルゼリーの抗認知症効果に関する実験的研究

本研究では、JRJローヤルゼリーが神経伝達物質合成酵素などの神経細胞で働く遺伝子の発現調節のみならず学習・記憶に関連する海馬の長期増強(Long-term potentiation)においても必要不可欠な役割を果たすCRE (cAMP-response element:サイクリックAMP応答配列)依存的転写活性を促進することを実験的に示し、ローヤルゼリーに顕著な抗認知症効果のあることを初めて明らかにした。また、ローヤルゼリーは学習・記憶などに密接に関連して働くPKA(cAMP-dependent protein kinase: サイクリックAMP依存性タンパク質リン酸化酵素)を介して細胞内情報伝達を促進する優れた作用を有することが明らかとなり、神経系に作用してその機能を調節する可能性も示された。
さらに、ローヤルゼリーのCRE依存的転写活性の増強は陳皮に由来するノビレチンなどと併用することによって、その機能が顕著に増強されることも明らかにした。
これらの結果は、東北大学との共同研究の成果として3編の欧文論文にまとめ、内外の雑誌に発表した。

Honeybee royal jelly stimulates CRE-mediated transcription in a PKA- but not MEK/ERK-dependent manner in PC12D cells. Pharmacometrics, 76(1/2): 33-38 (2009) Honey royal jelly and nobiletin stimulate CRE-mediated transcription in ERK -independent and -dependent fashions, respectively, in PC12D cells. J. Pharmacol. Sci., 116: 384 -387 (2011) The property of active substance from royal jelly in CRE-mediated transcriptional activity. Pharmacometrics, 82(1/2): 17-20 (2012)

3) ローヤルゼリータンパクのプロテオーム解析

本研究は、北海道大学、旭川医科大学との共同研究である。JRJローヤルゼリーに含まれる主要な可溶性タンパクに焦点をあて、液体クロマトグラフィー(HPLC)、電気泳動、二次元電気泳動、飛行時間型質量分析装置などの各種分析手法により主にMRJP-1に関するプロテオーム解析を行った。
まず、従来のような透析を用いることなしに超遠心法を用いることで、水溶性ローヤルゼリータンパクを各々MRJP-1、MRJP-2、MRJP-3を含む3層に分離する簡便な方法を確立し、これらをゲルろ過HPLC、SDS-PAGE、2次元電気泳動で分析した。
その結果、天然ローヤルゼリーではMRJP-1は接着タンパク(アピシミン)によって5量体(オリゴマー)を形成していることを明らかにし、その生理作用のひとつとしてヒトリンパ球の培養細胞を用量依存性に増殖させていることを示した。
また、MRJP-2,3がIgEの産生・分泌を抑制し、肥満細胞の脱顆粒と化学伝達物質の細胞外輸送を阻害することによって抗アレルギー作用を示すことなども明らかにした。これら結果は、3編の論文として海外の専門誌に発表を行った。

Molecular characteristics and physiological functions of major royal jelly protein 1 oligomer. Proteomics, 9: 5534-5543 (2009) Estimation and characterisation of major royal jelly proteins obtained from the honeybee Apis merifera. Food Chemistry, 114: 1491-1497 (2009) A rapid method to isolate soluble royal jelly proteins. Food Chemistry, 134(4): 2332-2337 (2012)

4) ローヤルゼリーペプチドのⅡ型糖尿病抑制効果に関する研究

ローヤルゼリータンパクをプロテアーゼで分解して作ったローヤルゼリーペプチドをⅡ型糖尿病モデルマウスに経口投与した結果、インスリン分泌量の上昇が確認された。
JRJローヤルゼリーペプチドにはインスリンの分泌量上昇を通じて血糖値を抑制する効果があると考えられた。
この研究成果は、海外の雑誌に1編の論文として報告した。

Influence of the digested products of royal jelly on insulin levels in KK-Ay mice, Food Sci. Technol. Res., 18(2): 309-313 (2012)

5) 上皮成長因子受容体阻害薬の皮膚毒性に対する蜂蜜保湿クリームの有効性に関する研究

皮膚毒性は癌のEGFRi(上皮成長因子受容体阻害薬)治療の際の深刻な副作用である。
本研究は、蜂蜜を含む保湿クリーム(HMC: Honey Moisucurizing Cream)のEGFRiによる皮膚毒性に対する有効性を調べたものである。
進行性大腸がんの患者で座瘡様発疹、乾燥肌、爪周囲炎などのsEGFRiによる副作用を示した患者にHMC 塗布を施した結果、蜂蜜クリームの2週間の塗布後は座瘡様発疹、乾燥肌、爪周囲炎の症状は顕著に改善された。HMCにはがん治療におけるEGFRiによる皮膚毒性を予防する効果が期待される。本研究は、患者の同意のもとに、旭川医科大学との共同研究として実施した。

Effect of moisturizing cream containing honey on epidermal growth factor receptor inhibitor-induced dermatologic toxicities in patients with advanced colorectal cancer. Pharmacometrics, 83(3/4): 17-22 (2012)

6) ローヤルゼリータンパクの簡易測定法の開発に関する研究

ローヤルゼリー主要タンパクのひとつであるMRJP-1の簡易測定法として、micro- ELISA (Enzyme-linked immunosorbent assay)の応用を試みた。MRJP-1に特異的な合成ペプチドを用いて家兎ポリクローナル抗体を作製し、このポリクローナル抗体はMRJP-1と特異的に反応することを確認した。
この抗体を用いてmicro-ELISA間接法を行い、測定した値が高速液体クロマトグラフィーによって分析したMRJP-1の値と直線的に相関することを示した。
この結果をもとに、種々のローヤルゼリーサンプルを測定した結果、MRJP-1量は従来のは高速液体クロマトグラフィーによって分析したMRJP1(アピシン)の六量体の値とほぼ一致した。さらに、MRJP-1に対するモノクローン抗体を作製し、異なるエピトープと特異的に反応する2種類のモノクローン抗体を選別した。これらのモノクローン抗体を用いたmicro- ELISAサンドイッチ法を開発し、上記と同様に高速液体クロマトグラフィーによって分析したMRJP-1の値と良く一致する結果を得た。
これらの研究は、MRJP-1含有量に基づくローヤルゼリーの新しい品質評価にあたって、簡便な品質のスクリーニング法として応用できる可能性を示している。
本研究は、富山県立大学との共同研究であり、その一部は1編の欧文論文にまとめられた。

Quantification of major royal jelly protein 1 in fresh royal jelly by indirect enzyme-linked immunosorbent assay. Biosci. Biotechnol. Biochem., 77(6): 1310-1312 (2013)

7) ローヤルゼリーのアルコール性肝障害防護効果に関する研究

ローヤルゼリーは、古くから「体質を改善する、免疫能を向上させる、若返る」などとされ、抗菌作用、抗腫瘍効果を含む免疫賦活効果及びストレスによる免疫低下を抑制する作用など種々の有効作用が知られている。
本研究では、5%エタノール含有の液体飼料を与えてアルコール性肝傷害を誘導したマウスモデルを用いてJRJローヤルゼリーの経口投与の効能について、免疫賦活作用を有する自然免疫担当細胞の動態に焦点を当てて解析を行った。
その結果、1) 肝臓重量の正常化、2) 血中トランスアミナーゼの低下、3) 高い肝NK細胞活性の誘導、4) 血清中IL-4、IL-5及びTNF-α値の低下が認められた。
本実験の結果から、ローヤルゼリーはアルコール摂取により低下した細胞性免疫能を正常化することにより、TNF-αの産生低下をもたらし、さらにNK細胞機能を活性化することにより変性した肝実質細胞を排除し肝細胞の新生をもたらしているものと考えられた。
このことは、JRJローヤルゼリーが変調をきたしている免疫機能の正常化と、それによる肝機能障害の改善に有効な機能性食品となりうることを強く示唆している。研究は、琉球大学との共同研究としてまとめられ、発表された。

The efficacy of royal jelly in the restoration of alcoholic liver injury in mouse model. Biomed. Res., 22: 1-8 (2011)

8) ローヤルゼリーの放射線障碍防護効果に関する研究

放射線はがん治療などにおいて有用な治療手段である反面、放射線照射による組織障碍、とりわけ放射線に感受性の高い造血組織や腸管組織の障碍が有効な放射線治療の弊害となっている。
本研究では、JRJローヤルゼリーの放射線障碍防護効果について、マウスモデルで検討を行った。実験では、マウスに致死量のX線全身照射を行い、マウスの死亡曲線や放射線に対する感受性が特に高い骨髄造血組織と消化管粘膜組織への影響について検討した。
その結果、ローヤルゼリー投与を行った放射線照射マウスでは明らかな延命効果が認められ、これらのマウスでは放射線照射によって激減した骨髄細胞や造血幹細胞数の顕著な回復が確認できた。
また、骨髄造血組織に次いで放射線の影響を受けやすい腸管粘膜組織でもローヤルゼリーを投与することによって、放射線照射によって失われた腸管上皮幹細胞数が急速に回復し、腸管上皮の顕著な再生が確認された。今回確認されたJRJローヤルゼリーによる放射線障害防護効果は、放射線照射による副作用を抑えつつ、より効率的な放射線がん治療を可能にすることを期待させるものである。
本研究は、琉球大学との共同研究であり、その結果は海外の雑誌に投稿中である。

Radioprotective effects of royal jelly administered to X-ray irradiated mice. Intern. J. Radiation Biol. (投稿中)