ミツバチにまつわるお話

第6回 エアコン完備の快適住宅で暮らす

巣から蜜が流れ出ないワケ

 ミツバチの巣は、六角形の小部屋(巣房)が縦横水平に並んだ形をしています。すると、「水平だと、せっかくためたハチミツがポタポタ流れ出たりしない?」と心配になりませんか?
 ご安心ください。ミツバチの巣を横からの断面で見ればわかりますが、蜜が流れ出るのを防ぐため、入り口が上向きになるようにわずかに角度がつけられています。ミツバチたちはちゃんと、あとあとのことを考えて巣を作っているんですね。
 巣内はエアコン完備で、温度は一定で快適そのもの。といっても、これはミツバチ自身の努力が大ですが・・・。
 哺乳類や鳥類は一年中体温が一定しています。たとえば人間の場合、間脳にある体温調節中枢によって自動的にコントロールされています。
 これに対して、体温調節機能がなく、周囲の温度変化に従って体温も変わるのが変温動物。冬になって体温が低下すると動きが鈍くなって死んでしまったり、冬眠を余儀なくされたりします。ミツバチが属する昆虫類も変温動物ですから、やはり冬は冬眠したり、卵や幼虫となって土の中でジッとしています。

冬も夏も34~35℃を維持

 ミツバチはどうでしょうか。たしかにミツバチも固体としては変温動物なので、外の気温に合わせて体温も上下します。ところが、群れとしてのミツバチは、一年中、巣内の温度を34~35℃に維持しています。つまり、昆虫でありながら、人間と同じように一定温度で生活しているのがミツバチなのです。
 なぜ34~35℃なのかというと、ミツバチの子育てに必要な温度だからで、これより低くても高くても発育不全になってしまいます。そこで発揮されるのがミツバチの“集団パワー”です。
 寒いとき、働き蜂はお尻を盛んに動かし、互いに体をこすり合わせたり、羽を震わせたりして熱を作り出し、巣内の温度を上昇させます。
 ミツバチにとっては夏の暑さも大敵。猛暑の時期になると巣の入り口に並んで、羽を震わせて風を起こし、熱気ムンムンになった巣内の温度を下げます。人力ならぬ蜂力扇風機です。
 おもしろいことに、この旋風行動はニホンミツバチとセイヨウミツバチとではやり方が違います。
 ニホンミツバチは頭を外に向けて羽を震わせます。すると、外の涼しい風が巣の中へと送られていきます。一方、セイヨウミツバチは反対向き、つまり頭を巣の入り口に向けて羽を震わせ、暑くなった巣内の空気を外に追い出そうとします。東西の“文化”の違いは、ミツバチの世界にもあるようです。
 それでも涼しくならないときは、蜜のかわりに胃袋に水を満タンにして持ち帰り、小さな水滴にして吐き出し、羽をせわしなく震わせて風を送り、気化熱によって巣内の温度を下げます。水冷式のエアコンというわけで、こうして夏涼しく冬暖かい環境維持につとめているのです。

ミツロウで作られる金銅仏

 ところで前回、六角形のハニカム構造は、宇宙ロケットなどに役立てられていると述べましたが、ミツバチの巣そのものも、私たち人間が大いに利用していることにも触れておきましょう。
 ミツバチの巣の原料は、ミツバチの体から分泌されるロウ(蝋)、ミツロウです。仏前などに灯すロウソクのロウは、今は石油を原料にしているものが圧倒的ですが、もともとの原料はミツロウでした。
 ロウソクよりもっと多く使われていたのが仏像制作の現場です。銅を溶かして流し込む鋳造という技法で作られ、表面に鍍金を施したものが金銅仏ですが、広く行われている製造法はミツロウを用いたロウ型と呼ばれるものです。
 日本に仏教が伝来したと同時に、最初に日本にもたらされたのたのが、ミツロウを用いて作った「釈迦仏金銅像」といわれています。
 まず、粘土で仏像の形を作ります。その上に、ミツロウを作りたい仏像の厚みだけ塗ります。ミツロウが固まると、細部を彫り込んでいきます。その上に粘土を厚く塗ります。乾燥すると鋳型のできあがり。鋳型を加熱すると、ミツロウが溶けて出てきます。ミツロウが溶け出してあいた隙間に、今度は溶けた金属を流し込みます。金属が冷えたら、鋳型を壊して中の金属を取り出し、丁寧に削ったり磨いたり加工を施せば、美しい仏像の完成です。