ミツバチにまつわるお話

第11回 ようこそ!ミツバチワンダーランドへ

ミツバチの種類とミツバチの家畜化

 ミツバチ(Apis spp.)は,節足動物門(Arthropoda),昆虫綱(Insecta) ,膜翅目(Hymenoptera),ミツバチ科(Apidae),ミツバチ属(Apis)に属する昆虫群のことでありますが、ミツバチの起源は大変古く、その祖先が地球上に現れたのは約1億5千万年前といわれます。そして、現在のミツバチは今から5千万年前にすでに進化を終えているとされています。蜂の仲間は、肉食系、草食系を合わせると地球上に20万種を越えておりますが、そのうち花の蜜や花粉を集め、蜂蜜と花粉を餌として生きている草食系の蜂を花蜂、あるいはミツバチと呼んでいます。このミツバチ(花蜂)の仲間として、現在までに知られているのはわずかに9種類であります。 これらミツバチのなかで、養蜂として家畜化された種類はわずか2種類で、洋蜂と称される西洋ミツバチ(Apis mellifera)と、東洋一亜種と呼ばれる東洋ミツバチ(A. indica)です。なかでも世界各地で最も多く飼育されているのは西洋種であり,単にミツバチと言えば本種と考えて良いでしょう。また,西洋種内の品種として,イタリア品種,アメリカ品種,カーニオラン品種,コーカシア品種などが知られていますが,イタリア品種とアメリカ品種を交配させたアメリカイタリア品種が家畜化されています。一方、東洋ミツバチは、アジア一帯に生息するミツバチの種類で、日本にも大昔から生息していて日本蜂と呼ばれていますが、中国では中華蜂と言われます。他のミツバチを家畜化することができなかった理由には、花蜜を集める集蜜性が悪いことや、洞窟や土中に営巣するために巣箱を利用する養蜂に不向きであったことなどがあげられます。 現在、世界中で家畜として一般に飼育されているのは西洋種のアメリカイタリア品種ですが、日本においては古来(大和時代)から在来種の日本蜂を用いた養蜂が行われていました。当時、蜂蜜などは量的にも少ない貴重な薬という扱いでありました。その後、日本で西洋蜂を用いた近代養蜂が行われるようになったのは明治12年頃からで、大量の蜂蜜、ローヤルゼリーなどを生産するための本格的養蜂産業として普及が進みましたが、一部山間地では古来の東洋種を用いた養蜂が現在も行われています。

東洋蜂と西洋蜂の違い

 現在、養蜂に利用されているミツバチは、西洋蜂と東洋蜂の2種類ですが、これらの種類には各々次のような特徴があります。 まず、外界で飛翔できる気温ですが、西洋蜂は気温が11℃以上ないと活発に体が動かず、巣外に飛翔することができません。これに対して、東洋蜂は低温に強く、7℃程度のかなり寒い気温でも飛翔し、花蜜を集めてくることができます。  その一方で、西洋蜂は集蜜性(蜜集め)の高い種類です。花からの流蜜が多い蜜源を選んで効率的に集蜜しようとするため、巣箱の近くに花が咲いていても流蜜が少ない場合には、それらを飛び越えて流蜜の多い花を目指して時には4,5キロ先まで飛んで行き、花蜜と花粉を集めてくることができます。このため、西洋蜂からは同じ種類の花から蜜を集めてくる単一蜜を採ることができます。蜂蜜は、蜜源となる花によって、その香りや味わいが異なるため、単一蜜は蜂蜜としての価値が高まります。この集蜜性の高さから、花の咲いている期間が長い時期には満杯となった蜜の貯蔵房から幾度となく採蜜をすることも可能です。 これに対して、東洋蜂は流蜜の多少に関係なく、どの花にも蜜を集めに行くため、単一蜜を採るには不向きです。しかし、東洋蜂ではたくさんの蜜を集める習性をもたないために採蜜は年に1~2回程度しかできない反面、巣房内に貯蔵される期間が長いので蜂蜜の完熟度が極めて高いという特徴があります。たとえば、西洋蜂では蜜の貯蔵房からの蜜集めは、巣板を遠心分離器にかけて回し、軽く遠心力をかけるだけで貯蔵房から飛び出してくる蜜を集められるのに対して、東洋蜂の集めた蜂蜜は貯蔵房を布に巻いて蝋でできた巣を潰し、強く絞って蜜を取る方法が一般的です。  次に、ミツバチの病気に対する抵抗性ですが、ミツバチの感染症として良く知られる病気にアメリカ腐蛆病、チョーク病、ノゼマ病などがあります。それ以外にもウイルスが原因の感染症や、感染症ではありませんが低温が原因となる病気、ある植物(Cyrilla racemiflora)の花蜜や花粉が原因となる病気、ミツバチヘギイタダニ(Varroa jacobsoni)の寄生による病気なども重要であります。これらの病気に対する抵抗性では、西洋蜂にくらべて東洋蜂が至って強く、東洋蜂が被害を受けることは稀です。しかし、西洋蜂では、蜂群全体がこれらの病気によって全滅させられることも珍しくありません。特に最近はミツバチの耐病性が一段と低下する傾向にあり、これらの予防のために抗生物質が無原則的にかつ不必要に多用されることによって抗生物質による蜂蜜汚染問題が深刻になっているのです。  そのほか、西洋蜂と東洋蜂の大きな差として、西洋蜂には盗蜜性があるが、東洋蜂にはないことがあげられます。東洋蜂は、西洋蜂に貯蜜を盗られると巣を放棄してしまうことがあります。また、西洋蜂は天気が悪い日や餌が不足していたりすると、しばしば人を刺すことがありますが、東洋蜂では人を刺すようなことは滅多にありません。  このように、養蜂においては西洋蜂にくらべて東洋蜂のほうが手間や扱いが楽ですが、集蜜性が乏しいことが養蜂産業としては一番のネックとなっているのです。 (次回はミツバチ社会の不思議について紹介いたします)